
コスミレコンゴウインコについて
美しきインディゴブルーのコンゴウインコ、コスミレコンゴウインコ。
絶大な人気をもつスミレコンゴウインコと遠目には似た容姿をしていますが、色合い、顔つき、サイズ感のどれもが異なる別種です。
スミレコンゴウインコとは比較にならない希少種で、個人で飼育することは不可能です。
ブラジル北東部の狭いエリアに分布し、生息地が発見されたのはごく最近の1978年。
その当時は60羽を残すのみという深刻な絶滅危惧種であり、現在でも世界中で見ることが出来る動物園施設は3箇所だけです。
コスミレコンゴウインコの基本情報
属名:Anodorhynchus スミレコンゴウインコ属 学名:Anodorhynchus leari 英名:Lear's Macaw / Indigo macaw 和名:コスミレコンゴウインコ 漢字表記:小菫金剛鸚哥 ポルトガル名:arara-azul-de-lear ドイツ名:Learara スペイン名:Guacamayo de Lear オランダ名:Lears Ara フランス名:Ara de Lear イタリア名:Ara indaco チェコ名:ara kobaltový ロシア名:Индиговый ара ブルガリア名:Индигов ара 中国名:青蓝金刚鹦鹉 / 靛藍麥鷍 性的二型:ナシ Size:70–75 cm 950g 分布域:南米|ブラジル北東部(バイーア州) 亜種:ナシ CITES Appendices I RED-LIST ENDANGERED 2009-

スミレコンゴウインコ属
コスミレコンゴウインコはスミレコンゴウインコ属 Andorrhynchus に分類されます。
模式種はスミレコンゴウインコ Anodorhynchus hyacinthinus
1860年頃の記録を最後に絶滅したと考えられているウミアオコンゴウインコAnodorhynchus glaucu も同属です。
そしてコスミレコンゴウインコとの3種でスミレコンゴウインコ属が構成されます。
Andorrhynchus スミレコンゴウインコ属 コスミレコンゴウインコ Anodorhynchus leari Lear's Macaw , Indigo macaw スミレコンゴウインコ Anodorhynchus hyacinthinus Hyacinth Macaw ウミアオコンゴウインコ Anodorhynchus glaucus Glaucous Macaw
絶滅した同属、ウミアオコンゴウインコ
ここでウミアオコンゴウインコについての詳細には触れませんが、その容姿を参考まで。
非常に貴重なウミアオコンゴウインコの標本がオランダのナツラリス自然史博物館(Naturalis Biodiversity Center)に保管されており、QuickTimeの3Dモデルデータが掲載されています。
wikipediaにも動画で掲載されています。
コスミレコンゴウインコの命名由来
和名については菫色のスミレコンゴウインコの小型種という読んで字の如しの命名。
英名 Lear’s macaw は、後述しますが有名なインコ絵画を数多く描き残した芸術家にして不思議の国のアリスのルイス・キャロルに多大な影響を及ぼしたエドワード・リアEdward Learの名を由来とした命名。
この名付けをしたのはナポレオンの甥。
学名 Andorrhynchus leari の種小名 leari はエドワード・リアの名。
属名 Andorrhynchus については、以前コンパニオンバード誌23号で岐阜大学繁殖研究室の楠田先生にスミレコンゴウインコの原稿をお願いしたときの解釈によると
ラテン語の「 a(無い) nodo(ギザギザ,結び目) hynchus(クチバシ)」。
ギザギザの無いクチバシ。
最初のコスミレコンゴウインコ
ごく稀だろうと推測しますが、1800年代にコスミレコンゴウインコは少し装いの異なるスミレコンゴウインコの変種程度の認識で一括に流通していました。
それは、1830代初頭にあのエドワード・リアEdward Lear によってスミレコンゴウインコとして描かれた作品がコスミレコンゴウインコであることが証明しています。
1856年にはナポレオン1世の弟で鳥類学者のシャルル・リュシアン・ボナパルト博士によってコスミレコンゴウインコは別種であるとされ、エドワード・リアに敬意を払ってAnodorhynchus leari / Lear’s Macaw と名付けられました。

コスミレコンゴウインコの発見
1856年にボナパルト博士によって種であることを提唱されたものの、有無を言わさぬほど明確な確立には至りませんでした。
そのため、それまで通りにスミレコンゴウインコの変種か亜種と考える説が主流でした。
時は流れ1978年、名高い鳥類学者ヘルムート・シック博士によってコスミレコンゴウインコの野生個体群と生息地が発見され、コスミレコンゴウインコが確立されました。
この発見があと数年遅ければ、そのまま絶滅していた可能性も十分ありえます。
コスミレコンゴウインコの分布域
分布域は南米ブラジルの北東部のバイーア州内陸側で、ごく一部エリアです。
現存する生息地はバイーア州北東部のラソダカタリーナRaso da Catarina高原で、トカ・ヴェリャToca Velhaとセラ・ブランカSerra Brancaの2箇所に大きなコロニーがあり、もう1つ小さなコロニーが確認されています。
コスミレコンゴウインコの生息数
ヘルムート・シック博士によって生息地が発見された時点で野生下生息数は推定60羽程度、1987年には70羽とされ、絶滅秒読みの深刻さでした。
もう少し南側に分布域をもっていた同属であるウミアオコンゴウインコは既に絶滅しています。
懸命な保全活動が開始され、BirdLife International(BLI)による2000年の発表では150羽となり、以前厳しい状況が続いていました。
このBLIの発表は過少申告であるという指摘で問題にもありましたが、保全活動は着実に成果をあげており、2018年のICMBioによる発表では1,694羽に増加しました。
BLIおよびIUCNはその時点で250~999羽としていましたが、2009年にはRED-Listの改訂でCRからENに降格しています。
コスミレコンゴウインコのRED-Listランク推移
IUCN(国際自然保護連合)RED-Listにおいては、1983年には推定60匹という深刻な絶滅危惧種であるCR(近絶滅種|絶滅危惧IA類)を指定しました。
2008年までCRが続き、2009年以降は絶滅危惧種ENに降格しました。
- 2019 — Endangered (EN)
- 2017 — Endangered (EN)
- 2016 — Endangered (EN)
- 2013 — Endangered (EN)
- 2012 — Endangered (EN)
- 2009 — Endangered (EN)
- 2008 — Critically Endangered (CR)
- 2004 — Critically Endangered (CR)
- 2000 — Critically Endangered (CR)
- 1996 — Critically Endangered (CR)
- 1994 — Critically Endangered (CR)
- 1988 — Threatened (T)
RED-Listのカテゴリーはアップデートが繰り返されており、現在は2001年のメジャーアップデートであるversion3.1が指針です。
コスミレコンゴウインコと山下さん
コスミレコンゴウインコやスミレコンゴウインコを調べるにあたって必ず登場するカルロス山下さん(Carlos Yamashita)。
コスミレコンゴウインコ研究の第一人者で、1987年の総個体数を60羽と推定したのも山下さんによるものです。
アオコンゴウインコ、スミレコンゴウインコについても同様です。
興味深い資料の数々は勿論のこと、日系で山下というお名前というだけで非常に親近感が湧きます。
山下さんは現在もIBAMA(ブラジル環境・再生可能天然資源院)で活躍されております。
コスミレコンゴウインコの採食
Ara属などのコンゴウインコは通常は樹上性の採食者ですが、スミレコンゴウインコ属は地面を歩いて採食をします。
スミレコンゴウインコ属に共通する主食はヤシの実です。
非常に硬いヤシの実を器用な脚と強力な嘴によって割ります。
スミレコンゴウインコ属の頬のパッチも地面での採食で適した進化とされます。
ギャロッピング│スミレコンゴウインコ属の特徴的な行動
Araコンゴウインコ属やCyanopsittaアオコンゴウインコ属は地面を歩くために特別な解剖学的適応がありません。
重心が胸の下にあるときにコンゴウインコは足を横に切って体を揺らしますが、これは解剖学的に登山に適しているそうです。
その点、スミレコンゴウインコ属は特有のギャロピングを行って歩行します。
ギャロッピングとは縦揺れと表現すれば良いのか、頭、体、翼を後ろに持ち上げてリズミカルなジャンプなどで非常に速く動きます。
送電線の揺れはギャロッピング現象と呼びます。
このような行動は、他の大型コンゴウインコ類には見られません。
中型コンゴウインコのアカミミコンゴウインコAra rubrogenysが唯一地面での採食を行うようですが、餌が地表に多い生息地の個体群のみの環境適応という説です。
コスミレコンゴウインコの展示
コスミレコンゴウインコを一般人が展示として見ることの出来る施設は世界に3箇所しかありません。
LoroParque スペイン・カナリア諸島
San Diego Zoo アメリカ・サンディエゴ
Sao Paulo Zoo ブラジル・サンパウロ
待望の世界初アオコンゴウ&スミレコンゴウ&コスミレコンゴウ&アオキコンゴウインコの揃い踏み展示が開始されたシンガポールのJurongBirdParkでしたが、オープニングに招待を頂いていたにも関わらず入院のため行けず。
そうこうしている間にコロナ禍の中、2021年夏にACTPへ返還されてしまいました。
残念至極…
https://www.biodiversitylibrary.org/page/40028158#page/60/mode/1up
https://www-bluemacaws-org.translate.goog/en-gb/article/anodorhynchus-macaws-as-followers-of-extinct-megafauna?_x_tr_sl=auto&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=op
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